身体が二つ

私は前妻の子です。父の再婚を聞いた時に、身体が引き裂かれる思いがしました。この感覚をどうにかして残して置きたいから書いているんだけど、波があって書きたい日もあれば書きたくない日もある。同じことを繰り返して書いています。それは私が不安だからです。書いても書いてもこの気持ちが消化されないからです。

 

書いても書いても誰かに話しても聞いてもらっても時間が経てばまた再び元の状態に戻るからです。解放されることはまず、ありません。捨てられたのは事実なのですから、これは一生変わりません。腹違いの子がいるのも変わりません。遅いのです。終わったことなんです。何も戻りません。

私だけのお父さんとお母さんも、戻りません。三人の家族には戻りません。離婚したのも再婚したのも二十年以上前の出来事ですから母にも父にも再婚相手にも当の昔の出来事なんですけど私は昨年父が亡くなった際に聞きました。だから隠されていたんです。親戚中、周りの人間全員から隠されていたんです。隠してきたのか、私に気を遣って話せなかったのかは、知りません。ですが皆、黙っていたのです。

 

私に誰も父の説明をする者はおりませんでした。父本人も、母さえも父のことを話したがりませんでした。幼少期の記憶はありました。父のことが大好きでした。父と遊んでいました。小学校に上がる前にいなくなりました。戸籍標本を取っていませんので父がどのぐらいで再婚をしたのかハッキリとした詳細日時は知らないのですが戸籍標本を取るのが怖いんです。見たら全てが終わってしまいそうな気がするから。生まれた子供の年齢を親戚に聞きましたがそれも本当かどうかわからない。

 

ちゃんとした記載を見ていないので再婚家族の正体もわかりません。私のお父さんは、他人の家族になってしまいました。私のお父さんは、私のお父さんではなくなりました。もちろん、離婚しても私のお父さんですよ。腹違いの兄弟ですよ。でもお父さんでは、なくなりました。もう、あなたは私の大好きなお父さんじゃない。遠い世界に行きました。帰って来ません。父にも母にも再婚相手にも当の昔の出来事です。自分たちはそれで終わっているのでしょう。若い頃の出来事ですからね。今全員60才以上です(父はもう亡くなりましたが)あなたたちには、もう過去の出来事ですよね。

 

でも私は違います。私は「先日」、聞いたのです。先日、聞いた出来事なんです。馬鹿にしているのですか??二十年以上も隠してきたことへの、罪の意識はないのですか??どんなに苦しかったことでしょう。どんなに悲しかったことでしょう。悲しかったのは私一人でした。二十八年間私をないがしろにし、無視し続けながら作り上げた「再婚家庭」はどんなに素晴らしい物だったのでしょう。見てみたい物です。

 

私にも教えて下さい。家庭の幸せを知らない私に家庭の優しさを教えて下さい。お父さんの存在を教えて下さい。お父さんの暖かさを教えて下さい。私のお父さんでした。私にもお父さんをください。私にもお父さんを分けて下さい。何故あなたたちばかりが、お父さんを独り占めにするのですか。そんなことをしていて悲しくはないのですか。お父さんの幸せとは、一体何ですか。家族という物はこんなにも悲しいものなのでしょうか。家族という物はこんなにも簡単に切り貼り出来る物なのですか。私にはわかりません。どなたか教えて下さい。

 

昨年親戚の口から「お父さんが死んだ。そしてあなたには異母兄弟がいる。」といきなり告げられた私の気持ちを知って下さい。こんなにも理不尽なことはありません。こんなにも腹立たしいことはありません。憤りと悲しみと怒りが沸いてきています。私は日々、このようにパソコンに向かう毎日でした。書いては消し、書いては消し、この作業の繰り返しをしています。終わることのない、ここはまるで刑務所のようでした。私は受刑者なのでしょうか。私の感覚では父の罪を娘の私が肩代わりしているといった奇妙な感覚があります。親の因果が子に報う、でした。

 

私が一緒に父の罪を償っているのです。もしかするとこれは私の罪なのかもしれません。私も昔、子を捨てたことがあるのか??などとも考えていました。前世です。前世の私の行いがこのように結果がなったのか??とも考えていました。因果応報があるのならば、私にもその原因があるのです。だから私も悪いのです。私の罪なのかもしれません。私と父の罪。母に償うつもりで私も父の霊に寄り添い一緒に生きています。

 

私の中で再婚という物は、ナイフのようでした。身体を全身真っ二つに引き裂かれたナイフでした。バッサリ、私のことをなかったことにされています。離婚と再婚はそんな物でした。知らない他人が土足でいきなり私の家族に入ってきて私の部屋を家族の部屋を土足で踏みつけている状態でした。このような感覚が致します。知らない女が勝手に土足で私の部屋に上がってきて、知らない女がいつまで永遠に戸籍上の上で私を踏みつけている、そんな感じがしました。私の切り裂かれた身体を見ることもなく、その家族は築かれていました。家族は作られていました。みんな、私のこの気持ちを誰一人、知りません。言っていないのですから、誰にも知りません。なんか再婚ってとても嫌いです。こんなことが起こる世の中も大嫌いです。家族も大嫌いです。再婚と聞くだけで虫唾が走ります。どんなに綺麗事を並べても所詮再婚だからです。所詮誰かが必ずどこかで泣いているからです。それはきっと、子です。知らないのは大人ばかり。