私は自分の人生がよくわからない。

 

私は幼い頃に父親が蒸発し行方不明と思って生きてきた。記憶違いなのかわからないがそう聞かされていたのでそう思って生きてきた。だが実際は少し違ったらしい。

 

本当は私が四歳の頃に離婚をしていて数年後に父は他の女性と再婚をしていたらしい。

去年四月に父は死んだ。春、桜の季節に私の父は死んだ。

 

私はそれまで父と面会すらなかった。何の、交流もなかった。

四歳で離れてから現在三十四歳、死ぬまで私は父に会わなかった。

 

あの人は、死ぬまで娘の私に会わなかった。

 

会えなかったのか、会いたくなかったのか、それは知らない。それはわからない。あの人の気持ちなど私には到底わからない。会いたくなかったのだろうと思う。

 

私も、父に会いたいなどと思ったことはただの一度もなかった。本当だ。

かすりもしなかった父のことは、私の中で一切の記憶を排除しその存在をなかったことにしていた。私は父のことを完全に抹殺した。自分の中の父を殺した。

 

それはおそらく、あの人もそうだったのだろう。父もまた私の存在を抹消した。なかったことにしたのである。おそらくきっとそうなんだろう。それしかないではないか。

 

過激な発言になるが私は父に殺されたと思っている。父もまた私に殺されたと思っているのかもしれない。だって親子なのにその存在を無視しているのだから。

 

なかったことにして生きてきたのだから。同じようなことだろう。