私の記録を何かに残して置きたいと思い、思いつく時には書きたいと思う。私の記録に特に意味はない。ただ、そういう人生もあったんだ、ということを書きたい。

 

私の記録には、意味はない。思いつく時に時間があれば書きたいだけだ。気がつけば消していることもあると思う。気まぐれ日誌なのだ。

 

私は私の家族が大好きだった。私と、お父さんと、お母さんの三人の家族が大好きだった。私には、それが全てだった。そしてそれを、信じていた。

 

夢は、夢に過ぎなかった。一過性の、幻だったのかもしれない。私の見ていた家族は、私の信じていた家族は、ほんの一瞬の儚き夢だったのである。

 

七歳まで過ごした我が家。私とお母さんとお父さんの家。家というか、長屋みたいなボロボロのアパートみたいなところだった。狭かった。

 

それでも私にとってはそこは、天国のようなところだった。暖かい家族の記憶しかそこにはない。お父さんとお母さんと私の三人だけの家。大好きだった。

 

その生活は、実際には四歳の時に終わりを告げていた。

 

私は七歳の頃にいなくなったと思っていたお父さんは、本当は四歳の時にすでにいなかった。二歳で別居し、四歳で私の父は家を出て行った。

 

七歳でお父さんは、いなくなった。

 

幼き私が必死に幻想を見るためにねつ造していた記憶に過ぎなかった。

 

二歳も、四歳も、七歳も、そうたいして変わりはしないではないか。そうとも思う。いや、そうではない。大きな意味を持っている。私には、厳しい現実だった。

 

私は父には弱い。母にも弱い。世間に対しても弱い。心が軟弱なのである。すぐに疲弊したり、すぐに一喜一憂する。これは昔から変わっていないみたいだ。

 

父は突然離婚届を母に提出してきた。

 

そしてついに、あの人はこの家を出て行った。

 

奇しくも私の誕生日の一か月前だ。

 

幼き日の私が父が突然いなくなったことをどのように思い、どのように理解していったかは定かではない。幼き私は、どのようにして父の記憶を失くしていったのだろうか。

 

自分で自分の中の父を殺す。

 

こんなことが私の身体の中で行われていた。

 

それは無意識にだろう。

 

小さな身体にその心と言う魂を宿し、一生懸命に考えていた。私は一体誰なのだろう、と。私はすでに私ではなくなっていた。私も父と同じように、その時死んだのだ。

 

私の死と父の死は、重なっている。母もまたあの時死んだのだろう。

 

この家族は、私が四歳の時にすでに全員死んでいるのだ。みな、心は死んでいるのだ。

それからの物語はそれぞれの中にしかないのだろうが、死んだことに変わりはない。